最終更新日 2023年6月27日

同一労働同一賃金が必要である理由

政府は働き方改革を推し進めていますが、そのなかで労働の制度面に関する調整も実施されています。

同一労働同一賃金もその一つであり、多くの人に関わりのある事案となっているのです。

特に非正規の従業員がたくさんいる企業は、経営の根幹に関わるほどの影響が出かねません。

そのため、これまでと変わらない経営を行いたいなら、正確な情報を仕入れて十分な準備をしておくことが大切です。

そもそも同一労働同一賃金が必要である理由を理解しておきましょう。

その背景にあるのは、同じ仕事をしているのにも関わらず、非正規の従業員は正社員と同様の待遇を受けられないことです。

つまり、賃金に格差があるのが当然のようになっていしまっているのが実情であり、それを改善していこうという流れになっています。

同一労働同一賃金が一般的になると、雇用の形態に関係なく仕事に見合った給与をもらえるようになります。

その動きを加速させているのは、非正規の従業員の割合が高くなってきたことです。

 

非正規の従業員は全体の40%

全体の40%にも達しているので、格差に対する不満が大きくなるのも無理はありません。

共働きであっても、夫婦二人とも非正規の労働者というのもよくある話です。

同一労働同一賃金が一般化すれば、すでに非正規の従業員として働いている人以外にもメリットがあります。

たとえば、年齢が高くて正社員になれず働いていなかった人でも、正社員にこだわる必要がないので活躍の可能性を広げられます。

また、働きに応じて妥当な給料をもらえるようになれば、多くの世帯の収入がアップして生活が安定しやすくなるでしょう。

必然的に仕事を続けやすくなるため、スキルアップに励みやすくキャリアも構築しやすくなります。

 

同一労働同一賃金の企業側のメリットは何か?

また、労働者だけでなく企業にもメリットがあるのを忘れてはいけません。

非正規の従業員の仕事への熱意が強くなることが業績の向上につながる可能性があります。

また、給料に不満を持って辞める人が減るので、人手が足りなくて困ってしまうリスクを下げることにもなるのです。

長く経営していくことを見据えたときに、長期的に優れた人材を確保できる状況になっている非常に有利に展開できます。

 

同一労働同一賃金の企業側のデメリットも確認

とはいえ、やはりデメリットもあるので注意しなければなりません。

非正規の従業員の給料を上げるということは、その資金を別のところから捻出しなければならないということです。

財源が見つからない場合は、正社員の給料を下げざるを得ない可能性も十分にあります。

そうなるとやる気を失ってしまう正社員が現れて、全体的に生産性が下がりかねません。

また、正社員としてのプライドを傷つける結果になることもあるでしょう。

だからといって、それを回避しようとすると、企業にとってのデメリットが大きくなってしまいます。

正社員の給料の水準を保とうとすると、トータルの人件費が著しく上昇することになるからです。

非正規の従業員が多いほど、上がり幅は大きくなってしまい、経営を圧迫する事態になりかねません。

事業が軌道に乗っていなければ、新たな融資が必要になるなど悩ましい状態になる恐れがあります。

 

同一労働同一賃金を一般化するのが難しい事情

同一労働同一賃金を一般化するのが難しい事情は、このようにデメリットだけではありません。

日本では職業に就くという考え方が定着しています。

そのため、就職するまで具体的な仕事内容は分からないことも珍しくありません。

しかし、アメリカなどでは採用の交渉時に仕事内容を明らかにするのが普通です。

つまり職業に就くのではなく、特定の仕事の担当者になる契約をするのです。

したがって、各人の役割はおのずと明らかになり、それを基準とすることで給料に関しても明確に決められます。

しかし、日本では前述のように仕事の割り当てがあいまいであり、給料も年功序列で高くなっていくという風潮があります。

以前よりは成果主義の導入が進んでいますが、それでもやはり年配者のほうが高い給料をもらっているのが一般的です。

そのため、厳密に仕事内容だけで給料を決めるのは難しいという実情があります。

 

労働組合のスタイルにも問題がある

さらに、労働組合のスタイルにも問題があることを覚えておきましょう。

事業分野ごとに構成されている国では、全体に共通する給与の基準を簡単に決められます。

それに対して、日本では一社ごとに構成されていることが多く、しかもその構成員のほとんどは正社員となっているのです。

つまり、非正規の労働者が満足できる制度に仕上がる可能性は高くありません。

そのような事情があるため、経営者にはスムーズに導入するためのかじ取りが求められます。

たとえば、これまであいまいにしてきた仕事の区分を細分化することも一つの手です。

そうすることで、どれが誰の仕事か分かりやすくなり、それぞれの給与も決めやすくなります。

早めにそのような対策をしておけば、同一労働同一賃金を取り入れた後に不満をいう人を少なくできるでしょう。

できるだけ多くの従業員が納得できるように進める必要があります。

投稿者 nisarchive